12. タイムトラベル系SF映画として観る

私はSF(Science Fiction)が大好きで、SFの映画やTVドラマをよく観ています。宇宙モノ、サイバーパンク系、ロボット・アンドロイド・人工知能、近未来ディストピアもの、等々々。中でも「タイムトラベル/タイムスリップ物」は大好きなジャンルで、特に「未来に行く話」より「過去に戻る話」にグッと来る話、泣ける話が多いように思います。分かりやすいところで近年のTVドラマでいうと「JIN -仁-」とか。(最終回はホントに涙・涙でした…ToT)


「過去の時代へタイムトラベルする話」がグッと来る理由。それは、主人公が昔の人々と出会い、彼らとの交流の中でその純粋な思いに触れ、無くしてしまっていた "心の大切な部分" を呼び起こされる。また、その時代の人々の懸命な生き方や行動が、実は現在の自分とつながっていることを知る。人として成長する。そういった体験を主人公と共にすることができる点が大きい気がします。


ただし、主人公は最後には元の時代に戻ることになり、心通わせた彼らと別れなければなりません。その"運命的な別れの哀しさ"がどうしてもタイムトラベル物には付いて回るのですね…。この哀しい気持ちから、どのように未来へ希望を持った気持ちに転換して物語を終わらせられるか? ここがタイムトラベル物のストーリー/脚本作りの腕の見せ所とも言えるでしょう。


このような観点で「ザ・ライド」を観てみると、「タイムトラベル系SF映画」としても実に素晴らしい出来映えになっていると私は思います。


(ここから先は、映画のストーリー・内容に触れる記述があります。本編観賞後にご覧いただくことをお勧めします。)



主人公のデイビッドは若くしてチャンピオンになった天才的なプロサーファーだが、世話役のエージェントを邪険に扱ったり、サーフィンのルールをないがしろにしたり、ビーチを汚したりする高慢でいけすかない男。そんな彼が100年前の時代にタイムスリップしてしまい、ハワイの英雄、後に「近代サーフィンの父」と言われる伝説のサーファー、デューク・カハナモクに出会う。最初はタイムスリップした現実を受け入れられないでいるが、デュークの大きなスピリット(アロハ・スピリット)に触れながら暮らして行くうちに、海へのリスペクトやハワイの自然を愛する気持ちが徐々に芽生え、また本当のサーフィンの精神にも近づいていく…。


しかし、デイビッドは再度のタイムスリップで現代に引き戻されてしまう。せっかく親友になれたデュークや恋人レフアとの突然の別れ…。哀しみとやるせなさの中、辛くも優勝した大会のスピーチの中で、エージェントやレスキュー、同僚サーファー、そしてデューク・カハナモクへの感謝を述べる。人間的な成長をしたデイビッド。今は亡きデュークの銅像を見上げ、涙が込み上げるが、彼にちなんだレストラン「DUKES」で、恋人レフアと瓜二つな孫レフアと(再び?)出会う。「話せないか?」と問いかけるデイビッドに彼女が示した待ち合わせ場所は…あの「モアナ・ホテル」 物語は彼女とのこれからを連想させ、希望を持って終わる…。


どうですか、このストーリーとエンディング。ハラハラ・ドキドキ満載のジェットコースターのようなSF映画も楽しいですが、100年前のハワイの美しい自然とゆっくりした時間の流れの中で、純朴なハワイアンの人々との交流が描かれるこの映画は、タイムトラベルSF映画としても素晴らしい出来映えであると思います。

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