11. 英語で楽しむ名場面(その1)

この映画の日本語字幕は、日本人によく配慮された分かりやすい翻訳がされているように思います。世の中には時々「それは意訳しすぎだろう〜^^;」と突っ込みたくなるような映画もありますが、この映画はそんなことはなく、原語の英語にかなり忠実で好感が持てるものになっています。


もちろん繰り返し観ていると、「ここのせりふは原語(英語)の言い回しがイイ感じ」という箇所も出てきます。そこでこの項では、原語の言い回しやニュアンスの違いを楽しんでいるシーンをピックアップしてみようと思います。(つたないヒアリング力ゆえ、まちがっていたらごめんなさい。f^^;)

(ここから先は、映画のストーリー・内容に触れる記述があります。本編観賞後にご覧いただくことをお勧めします。)


● 海から這い上がってきたデイビッドにレフアが初めて声をかけるシーン。

 (本編30:00〜 予告編1:53〜


日本語字幕:

 デイビッド(ゲホッ、ゲホッ)

 レフア  「大丈夫? ホテルに行く?」

 デイビッド「いや、大丈夫だ」

 レフア  「ビーチでマケないでよ」

 デイビッド「ハワイ語はやめてくれ!


英語:

 Lehua " Just don't MAKE on the beach. "

 David " Doesn't anyone around here speak English !? "

    (ここのやつらは誰も英語をしゃべらないのか !?


デイビッドのせりふが日本語訳と英語でちょっと内容が異なっていますね。そもそもなぜデイビッドがこう叫んだかというと、ここの前のシーンで、ビーチボーイ達に現代の話が通じず、イライラして彼らに当たってしまい、それでハワイ語で「ププレ」(pupule、「狂ったヤツ」)と呼ばれて海に引きづり込まれた。


しこたま海水を飲まされてやっとビーチに這い上がってきたのに、かけられた言葉がまたしてもハワイ語の「マケ」だった。そこで " ハワイ語はもうたくさんだ!" という気持ちになって、この言葉になったわけですね。


さて、日本語訳の方はというと、おそらく翻訳者の方は、レフアのせりふの「マケ」の部分がここだけピンポイントで英語ではないということを、字幕を見ている日本の人はこの瞬間には気づかないだろう、と考えたのでしょう。確かに、全編英語でしゃべっている(はずの)映画で「誰も英語をしゃべらないのか !?」だとちょっと変ですよね。


「マケ」がハワイ語であることはこの直後の会話で説明される順番であるし、" ハワイ語はもうたくさんだ!" との気持ちを込めたせりふでありますから、これらを踏まえて日本語字幕は「ハワイ語はやめてくれ!」としたのでしょう。配慮の行き届いたうまい翻訳だと思います。Good jobです。



● 馬車に揺られてマノア渓谷に向かうデイビッドとレフアの会話

 (本編50:00〜 )


日本語字幕:

 レフア  「10分?」

 デイビッド「車はこの100倍のスピードで走るんだ」

   :

 デイビッド「信じる?」

 レフア  「あなたには未来を読む力がある


英語:

 David " So you believe me ? "

 Lehua " I believe, that you have good vision of the future. "
    (私は、あなたが未来の良いヴィジョンを持っていることを信じる


誰もデイビッドが語る未来の話を信じてくれない中、初めてレフアが信じてくれたシーンです。" good vision " という言葉が原語のせりふにはあるんですね。" あなたのことを信じる " というニュアンスも含まれている感じがイイな、と思います。



● マノア渓谷の美しい自然の中でレフアとデイビッドが語り合うシーン
 (本編55:30〜 予告編2:34〜


日本語字幕:

 レフア  「2002年になっても、この景色は変わらない?

 デイビッド(長い沈黙の後、)「そう願うよ…」


英語:

 Lehua " In the year 2002, will all of these still be here ? "
    (2002年になっても、これら全部まだここにある?

 David " I hope so ... "


ここでは " all of these "が「この景色」と訳されています。レフアが周りの景色を見回しながら言っているので、これで全然OKですね。個人的には " still be here ? "(まだここにある?)という語感が気に入っています。


ちなみに私はこのシーンのデイビッドが大好きです。「まだここにある?」と尋ねるレフアに、もし真正直に答えるとしたら、「いや、未来のハワイは観光地として大規模に開発されてて、ワイキキには巨大なホテルが立ち並んでるし、ここだってこのままってわけにはいかないよ」となると思います。


しかし、そんな事実をレフアに告げるわけにいかないデイビッドは、小さくため息をつき、レフアの横顔を見つめ、再び周りの美しい自然を見渡します。そして長い沈黙の後になんとか紡ぎだした返事が " I hope so ..."(そう願うよ…)


このやさしい気遣いと、レフアが期待する未来ではないことを知るやるせなさが入り交じったデイビッドの表情とせりふが、何度見てもグッときます。名シーンです。



さて、原語の言い回しやニュアンスを知って、よりこの映画を楽しもうというこのコーナー、いかがでしたでしょうか? 取り上げたいシーンがまだまだあるので、またあらためて書きたいと思います。

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