10. 現代のハワイアン代表、ジョー・キミアラ

この物語の大半は100年前のハワイを舞台に描かれていて、現代(2002年)のシーンは映画の最初と最後のさほど長くない時間です。ですが、この部分に「現代のハワイアン代表」とも言える、愛すべきキャラクターが登場しています。ジョー・キミアラ、その人です。(左写真の青いサーフショーツがジョー・キミアラ)

(ここから先は、映画のストーリー・内容に触れる記述があります。本編観賞後にご覧いただくことをお勧めします。)


それでは、映画の中でのジョー・キミアラの言動を見ていきましょう。


● まず、ハワイの空港に到着したデイビッドを巨大なリムジンとグラマラスな女の子2人が迎えます。「おい、見ろよ」「これがタイトルを取ったボーナスか」とサーファー仲間たちがニヤついてうらやましがる中で、ジョー・キミアラはひとり引いた表情で、「やめろよ。サーフィンとは関係ない」(That is nothing to do with the ride.)


● ハワイの大会が始まり、ビーチで準備するサーファー達。救助隊のリーダーがルールの説明と共に「海への尊敬を忘れるな」(Remember, respect the ocean.)との言葉をかけますが、デイビットはほとんど耳を貸していない様子。

そして第一ヒートが始まり、パドリングで海に出ていくサーファー達。「前みたいに卑怯な手は使うなよ」 デイビッド「優勝のためなら(何でもするぜ)」「なんてやつだ!」との会話に、ジョーは「おい、尊敬だ」(Hey.... respect!)と仲間をたしなめます。


● 再び現代にタイムスリップし、救助隊に助けられたデイビッドがビーチに横たわります。大会参加者のサーファーのひとりが溺れたデイビッドを見下ろしながら「やっと勝てると思ったのにな」と心ない言葉を口にします。ジョーは "今そんなこと言うかよ… " と苦笑いを浮かべます。


● 第2ヒートに出場でき、大会に優勝したデイビッドは表彰台でのスピーチで、第1ヒートの勝者であるジョーを讃えます。照れながら「ありがとう」とデイビッドと堅い握手し、喜ぶジョーの表情。(とてもすてきな笑顔なので、ぜひあらためて見てみてください。^^)


● デイビッドはスピーチの最後、デューク・カハナモクへの感謝の言葉と共に、「彼の才能や天性、そしてマナがなければ、サーフィンは今日のように発展しなかっただろう」と発言します。その唐突な発言に、"急に何を言いだすんだろう?"と怪訝な表情を浮かべる聴衆。でも、ジョーは "そう、本当にそうだよね…" という表情でうんうんとうなづきます。



いかがでしょう? 映画の本筋とは関係ない、一見脇役のように見えるジョー・キミアラですが、現代のシーンにこのようなキャラクターを登場させたクロサワ監督の思いを私は感じずにはいられません。


監督がこの映画で一番に描きたかったのは、もちろんハワイの良心たるデューク・カハナモクだと思いますが、ジョー・キミアラもまた、監督がぜひとも見せたかった「アロハ・スピリットの人」であるように思えます。


ハワイアンのあるべき姿、海へのリスペクトを、デュークだけでなくジョーの姿を通じて監督は伝えたかったのではないでしょうか。もしかすると……ジョー・キミアラは監督自身の姿なのかもしれませんね。(^^)

0コメント

  • 1000 / 1000